東大地理 攻略ナビ

大学受験レベルに特化したインタラクティブ学習ガイド

東大地理とは?

このセクションでは、東大地理の試験がどのような特徴を持つのか、その全体像を解説します。単なる暗記ではなく、地理的な事象の「なぜ?」を問う深い思考力が求められることを理解することが、攻略の第一歩です。ここでは、試験の基本的な構成、評価される能力、そして対策の心構えについて学びます。

思考力重視

データや地図から事象の因果関係を読み解く力が問われます。

短文論述

複数の資料を統合し、多角的な視点から論理的に説明する能力が必要です。

全範囲から出題

系統地理から地誌まで、深い理解が求められます。苦手分野を作らないことが重要です。

出題分野分析

このセクションでは、過去の出題傾向を分析し、どの分野が特に重要視されているかを視覚的に示します。レーダーチャートを使って、各分野の出題頻度や重要度を確認できます。これにより、学習の優先順位をつけ、効率的に対策を進めるための戦略を立てることができます。

チャートは各分野の重要度を示します。バランスの取れた学習が不可欠です。

論述対策

東大地理の最大の壁とも言える論述問題。このセクションでは、その攻略法を具体的に解説します。論理的な文章を構築するためのステップや、高得点を狙うためのポイントを学びましょう。以下に過去の論述問題のテーマ例を挙げます。

解答の骨子

  • 現状分析:人口爆発、需要増、生産の偏在、気候変動。
  • 生産側の課題:緑の革命の功罪、水資源枯渇。
  • 消費・分配側の課題:フードマイレージ、フードロス、貿易と食料安全保障。
  • 解決策:アグリビジネス、フェアトレード、フードテック、地産地消。

解答の骨子

  • 原因:東京一極集中、少子高齢化、若年層流出。
  • 問題点:限界集落、インフラ維持困難、文化喪失。
  • 対策:交通・情報網整備、U/Iターン支援、関係人口、6次産業化。
  • 具体例:徳島県神山町、島根県海士町など。

系統地理の要点

系統地理は、地理的事象の「なぜ」を解明するための法則や原理を学ぶ分野です。地形、気候、人口、産業といった各テーマの知識は、地誌問題を解くための「思考の道具」となります。ここでは各分野の最重要ポイントを地図と共に整理します。

1. 地形 ― 人間活動の舞台

プレートテクトニクス

広がる・狭まる・ずれる境界と、それぞれで形成される大地形(海嶺、海溝、造山帯、断層)の関連を理解する。

小地形と土地利用

河川の作用による扇状地・氾濫原・三角州の成因と、典型的な土地利用(果樹園、水田など)をセットで覚える。

概念図:プレート境界

狭まる境界(海溝)
広がる境界(海嶺)
ずれる境界(断層)

2. 気候 ― 全てを規定する要因

気候 ➔ 植生 ➔ 土壌 の連鎖

この因果関係は地理学の基本原則。気候・農業・土壌を関連付けて覚えることが論述で役立つ。

Cs(地中海性) → 硬葉樹林 → テラロッサ
Cfb(西岸海洋性) → 混合林 → 褐色森林土
Df(亜寒帯) → 針葉樹林(タイガ) → ポドゾル

特に、海流卓越風が沿岸地域の気候に与える影響は頻出。例:ペルー沖の寒流が沿岸に砂漠を形成する。

概念図:世界の主要な海流と風系

←偏西風
←貿易風
暖流
寒流

3. 農業・工業 ― 経済活動の空間理論

チューネンの農業立地論

市場(都市)からの距離で地代と輸送費が変化し、作物が同心円状に分布するとしたモデル。園芸農業→酪農→穀物農業の順に立地。

ヴェーバーの工業立地論

輸送費が最小になる地点に工場が立地するとしたモデル。原料指数(原料重量/製品重量)が1より大きいと原料地指向、1より小さいと市場指向。

頻出地誌の攻略

地誌は、系統地理で学んだ「道具」を使って、特定の地域を分析する応用問題です。ここでは、特に出題頻度の高い地域を取り上げ、系統地理の知識とどう結びつけるべきかを示します。

日本地誌 ― 最重要攻略対象

日本の各地域の自然環境が、産業や人口にどう影響しているかを具体的に説明できるかが鍵です。

ケーススタディ:長野 vs 茨城のレタス栽培

答:長野は高冷地気候で夏出荷。茨城は大消費地に近い立地で春秋出荷。

ケーススタディ:香川の水不足

答:瀬戸内気候で少雨のため、多雨な四国山地の吉野川から香川用水で取水。

概念図:日本の重要地点

東京
茨城
長野
香川
吉野川/香川用水

アメリカ地誌 ― 適地適作と産業シフト

アグリビジネスと農業地域

広大な土地で機械化を進め、穀物メジャーが生産から販売までを支配。コーンベルト(混合農業)、フィードロット(企業的牧畜)が特徴。

サンベルトへの人口・産業移動

スノーベルトから、温暖な気候、安価な労働力、広大な土地を求めて、航空宇宙産業やIT産業などの先端技術産業が移転。

サンベルト
スノーベルト
コーンベルト

ヨーロッパ地誌 ― 統合と多様性

工業地域の変遷と国際分業

ルールなど石炭産地の重工業が衰退し、ロッテルダムなど臨海部へ。近年はエアバスのような国際分業や「第三のイタリア」が重要。

言語・宗教の分布と民族問題

ゲルマン系(プロテスタント)、ラテン系(カトリック)、スラブ系(東方正教)の大まかな分布と、移民問題や地域紛争の背景を理解。

ブルーバナナ
ゲルマン系
ラテン系
スラブ系

中国地誌 ― 世界の工場とその変容

沿海部と内陸部の経済格差

沿海部に経済特区を設置し外資を導入、輸出指向型工業化を推進。一方、内陸部は開発が遅れ、国内の大きな経済格差が課題。

農業地域の南北差

ホワイ川・チンリン山脈を境に、畑作中心の華北(小麦)と稲作中心の華中・華南に大別される。南船北馬。

内陸
沿海部

南米地誌 ― 資源開発と環境問題

ブラジルの農業開発

セラードと呼ばれる熱帯草原を開発し、大豆やサトウキビ(バイオエタノール原料)の大規模生産。一方で熱帯雨林の破壊が問題に。

アンデス諸国の鉱産資源

チリやペルーは環太平洋造山帯に位置し、銅や銀、近年はリチウムなどレアメタルの産出が盛ん。経済を支える一方、外資への依存も課題。

アマゾン
セラード
アンデス山脈

アフリカ地誌 ― 植民地主義の遺産と成長

モノカルチャー経済と貧困

旧宗主国の都合で特定の商品作物(カカオ、コーヒー等)や鉱産資源の生産に特化。国際価格の変動に経済が左右されやすい。

直線的な国境と民族紛争

植民地時代に民族分布を無視して引かれた国境線が、独立後の内戦や紛争の一因となっている。

直線的な国境
カカオベルト
カッパーベルト

オセアニア地誌 ― 資源大国と多文化社会

オーストラリアの鉱業と農業

安定陸塊に位置し鉄鉱石・石炭が豊富。乾燥地域では企業的牧羊、南東部では小麦栽培や酪農が盛ん。

多文化主義とアジアとの連携

白豪主義を撤廃し、アジアからの移民を積極的に受け入れ。経済的にも日本や中国との結びつきが強い。

大鑽井盆地
マレー・ダーリング盆地

西アジア・北アフリカ地誌 ― 乾燥と石油

石油資源とOPEC

ペルシャ湾岸に世界の石油埋蔵量の多くが集中。OPEC(石油輸出国機構)を通じ、国際価格に大きな影響力を持つ。

乾燥気候と水資源問題

大部分が砂漠気候(BW)。外来河川や地下水に依存するほか、海水淡水化プラントや点滴灌漑など、水を得るための工夫が重要。

ペルシャ湾岸
ナイル川(外来河川)